8)睡眠時無呼吸症候群領域

[睡眠時無呼吸症候群の多くは肥満が関与]

睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome:SAS)とは、7時間の睡眠中に無呼吸が30回以上あり、それを反復する方のことをいいます。日本でも200~400万人の罹患者がいるとされています。特に肥満が関与するのは閉塞型(のどの奥が細くなり、無呼吸を起こす)であり、SASの大半を占めます。

[自身の健康を脅かすだけでは無く社会的な責任も…]

SASの特徴的な症状は大きないびき、昼間の強い眠気や夜間の熟眠感の欠如等です。放っておくと、生活習慣病の悪化や心臓突然死の危険も増加します。また、昼間の眠気が強烈なため、運転中の事故などの引き金になり、社会的な問題として扱われるようになりました。(下記関連記事参照)SASによる事故を防ぐため、道路交通法でも2002年以来、「未治療かつ重症の過眠症状を有する睡眠障害は免許停止・保留の条件になること」が定められています。

[たかが眠気と侮らず、検査・診断を]

SASの治療(CPAP療法など)と肥満症治療を同時に行うことで、生活習慣病の改善も見込めます。まずは医療機関でSASの検査、診断を受けましょう。

【関連記事】

●2002年8月2日、乗用車を運転中の会社員(59歳)が、対向車線にはみ出し、対向車と正面衝突、対向車の男女3人に重軽傷を負わせた。
(この事件では、運転者が睡眠時無呼吸症候群だと分かり、事故当時、予兆なく睡眠に陥っており、前方注視義務を果たすことができない状態だったと過失を否定、無罪となった。)

●2002年8月3日、福山市の山陽本線で上り貨物列車の運転士が居眠り。
列車は上り坂で停車後、約500メートル逆走し停止した。約5分後に気が付き列車を発車させた。(SASのため起訴猶予処分)

●2003年2月16日、広島駅を出発した貨物列車が8時25分頃に瀬野~八本松間の山陽本線の急勾配で走行不能に。
この区間は急勾配のため、列車の最後部にも機関車を繋いでおり、その運転手がSASのため失神したのが原因。
前部の機関車の運転手が後部の機関車に来て運転手が寝ているのを発見。
揺り起こし、25分後に出発。

●2003年2月26日、山陽新幹線「ひかり126号」の運転士(33歳)が眠ったまま約8分間、走行距離は26キロ運転し、岡山駅で緊急停車。
これを契機としてSASに関心が持たれるようになった。

●2005年7月9日夜、小野田市沖の周防灘で貨物船と液化ガス船が衝突した事故。
呉市の貨物船永田丸(497トン)が、停泊中だった尾道市の液化ガス船第2昭鶴丸(1,557トン)に衝突。
昭鶴丸から燃料の重油約37キロリットルが流出。
貨物船で当直勤務をしていた1等航海士が睡眠時無呼吸症候群だったための居眠りが事故原因。
(当時、海運業界にはSASの疑いがある船員が検査を受ける環境がなかったため、処分見送り。)

●2007年8月8日、午前2時過ぎ、静岡県島田市の東海道線島田-金谷間で貨物列車の運転手が眠り、上り坂で停車後、その坂を下りながら、貨物列車は少しずつ速度を上げた。
500メートルほど走ったとき、眠っていた運転士が目覚め、急ブレーキをかけた。後続の急行寝台列車銀河号まで220メートルの地点だった。

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